皮から革へ。鞣し技術の獲得と独自の発展。

 革製品は世界中に存在し、愛好家もそうでない方も靴やカバン、ジャケットや小物など様々な形で「革」に触れています。革製品には独特の風合い、魅力があり、愛好家ともなると身に着ける物のほとんどを革製品でそろえようとするほどです。そんな極端なケースは別にして、見た目の艶やシボ感、肌触りやきしむ音など革ならではと思わせる理由はいったい全体なんなのでしょうか。本日はそんな革の歴史を探ってみます。

狩猟時代から皮を利用

 人類が狩猟生活をしていたころから動物の皮は衣服や住居、入れ物などに利用されていました。初めは敷物や風雨を凌ぐための屋根や壁に利用され、徐々に身にまとうようになっていきます。皮の利用が進むにつれ、単に剥いだモノを乾かして使うだけではなく、脱毛したり、灰汁につけてみたり、たたいたりもんだりするなどして使いやすい皮を作る技術が磨かれました。

 革を乾燥させる、煙でいぶすなどすると腐敗しにくいことを経験的に学び、また脂肪が馴染むと柔らかくなることから脂や内臓、脳漿を塗りつけるなどしてより使いやすい皮を獲得していきます。これが初期の鞣しです。これらの原始的な鞣しは紀元前8000年頃には始まっていたと考えられており、革の利用がいかに古くからおこなわれていたかが分かります。

海外からの新技術+独自進化

 日本には4世紀ごろに百済より革の縫製がもたらされ、その後高麗より革職人が渡来し新しい技術が国内に広がっていくことになります。神事や武具、馬具をはじめとして様々な用途に用いられ、その中で独自の技術も発展していきました。鹿革を利用する印伝や和更紗などはその最たるもので、印伝のルーツと言われる藁を使って革をいぶし、染色する印伝技法は宣教師ルイス・フロイスも驚いたとか。

 現在出回っている革製品のほとんどは近代に入ってから積極的に取り入れられた西洋式の製法によるもので、生活様式も急速に洋式化され、今やそれが当然となっているなかで、いわゆる和風が特異なものになっているのは悲しいところです。市場が変われば日本独自の技法を守ってやっていけるところも少なくなるのは当然ですが、何かこれを残すのではなく再興する方法があればと部外者は勝手なことを思う次第です。

鞣しと環境問題、古来の鞣し方法の見直し

 ここ数年の間にフル・ベジタブル鞣し、タンニン鞣しなどの言葉をよく聞くようになりました。これはいったい何かというと植物性のタンニン剤で革を鞣しているという意味です。植物性じゃないなら他には何があるのかと言うと、クロム鞣しです。クロム鞣しは化学薬品クロムを使って革を鞣すもので、革の発色や柔らかさなど加工の幅が大きく広がり、また鞣しにかかる時間も短縮できるという非常に便利な技法です。

 そんな便利なクロム鞣しですが、排水に重金属が含まれ環境汚染につながるというデメリットがあります。もちろん工場排水のろ過や浄水の規定は設けられたりしますが、守られることなく、垂れ流しが続いている現実もあります。この他、一部の劣悪な環境下で働いている鞣し工場の工員らは化学薬品による健康被害を受けているなど社会問題にもなっています。

 そこで見直されているのが従来の鞣し方法というわけです。環境保護の観点から植物性タンニン鞣し、ミョウバンを使った鞣しなどの技術が再び用いられているわけですが、残念ながらクロム鞣しより汎用性があるとは言えず、現在も試行錯誤が繰り返されているということです。

 人類の歴史は皮革の歴史とも言えます。現在では必要に迫られてと言うわけではありませんが、これからも革の利用は続いていくでしょう。クロム鞣しのように利便性に特化した技術があったということは素晴らしいことですが、環境への配慮という面は重要視されていなかったと言えるかもしれません。今後ますます環境保全の点を重視した鞣し方法が求められていくのは間違いなく、その技術の確立が新たな皮革産業の柱となるのではないでしょうか。

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